学思塾からのお知らせ
「なぜ学ぶのか」、「どう生きるのか」を考える
学思塾長 中田 隆二
教員時代、埼玉県立川越総合高校の影山一先生の下で、約二週間、弓道指導を学ぶ機会を得ました。その中で心に残る指導がありました。
影山先生は、部員や国体選手に、「大木の根は、枝先の下まで伸びている。地上の枝葉は目で見える。見えない地中で、根は幹から遠くまで広く深く大地に伸びている。この根が支えとなり、木は大きく高く伸びることができる。」と話されました。
弓道の成果は試合で見ることができます。これは日々の地道な練習の積み重ねの結果です。先生は毎日の見えない努力の大切さを説かれていました。
勉強も同じく毎日の家庭学習の努力が大切です。スランプで迷いが生じる時もありまが、中途半端な学習では悔いが残ります。その時は、集中し、「もうこれ以上はやれない、精一杯やった。」という自信を持ち、天命を待つ心境に至るまで学習に取り組んでください。限界にいどみ挫折に向き合い、「なぜ学ぶのか」の原点に立ち返ると、次に何をなすべきかが見えてきます。
もう限界だと感じた時、私は二つのことを勧めます。
一つは弓道(武道)の腹式呼吸です。普段息を吐くとお腹はへこみますが、吐いてお腹を膨らませるのです。腹筋を使いおへその下に力を入れて深く息を吐き、このあと「できる、できる、何とかなるさ」と唱えると心が落ち着きます。
二つ目は「修文練武」の教えです。「勉強と部活動に集中し、心の切り替えを速くすることを身につけよ」の意です。限られた時間の割り振りを考え、充実した濃厚な高校生活を送れという意味もあります。関根郁夫先生(県立浦和高校第28代校長、2013-17年埼玉県教育委員会教育長)は「二兎を追う者は一兎をも得ず」ではなく、「少なくとも三兎を追え」といわれました。たとえウサギを捕まえられなくても、「集中」と「切り替え」で複数のことに同時に挑戦する姿勢(心)を持つことが大切だというのです。時間を大切にし、心を切り替えて二つでも三つでも同時に行う能力を身につけてください。
かつて私は弓道部で優勝を目標に練習していました。負けて審判控室で涙することもありました。ある時選手たちが武道館の廊下の隅でかたまって泣き出しました。この姿を見て「これで勝てる」と直感しました。のち幾度も優勝旗を預かることができました。部活動の目的は、負けて自分を考える機会をつくることだとも思いました。
「なぜ学ぶのか」と学習の意味を問い続けると、「高い志」ができます。限りある人生を「どう生きるのか」と考え続けると、「広い視野」が持てます。自分なりの結論をしっかり考える人は成長します。高い志と広い視野を持つ若者の力が、それぞれの「一隅」を照らして日本の未来を明るくかえていくと信じています。
年末に塾生の進路相談も多くなりました。十分とはいえない塾施設ですが、個性あふれ熱意にみちた講師に何でも相談してください。